5 嘘

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5 嘘

 俺「なぁ、乍哭」  乍哭「どうしたの?」  俺「出掛けてきていいか?」  乍哭「夜まで?」  俺「うん」  乍哭「晩御飯は?」  俺「食べてくる」  乍哭「……了解」  俺「わりぃな」 勿論、出掛けるなんて嘘だ。 俺は、ある疑問が生まれた。 それを、確かめに行くんだ。  俺「乍哭の家……」 本当にお母さんは死んだのだろうか。 それに、乍哭のパパは……。  俺「よし、行こう」 ピンポーン  パパ「……誰だ?」  俺「初めまして、江口庵哩です」  パパ「庵哩……お前か」  パパ「あいつの子は」  俺「そうです」  俺「お母さん、いますか?」  パパ「……いない」  俺「……生きてますか?」  パパ「どうして、そんな質問を」  俺「乍哭から死んだって聞いたんです」  パパ「あのバカはどこにいるんだッ!!」  俺「じゃぁ、教えてください」  俺「お母さんはどこですか?」  パパ「……あいつは死んださ」  俺「……殺したんですか?」  パパ「あいつから変なことを聞いたか?」  俺「……ヤクザだって」  パパ「それは全てあいつの作った嘘だ」  俺「乍哭がそんなこと……」  パパ「殺してなんかいない」  パパ「事故死さ」  パパ「気が狂ったんだろう」  俺「……」  パパ「あいつの体に傷があるのを見たことがあるか?」  俺「ないです」  パパ「それは虐待をされていない、ということだ」  パパ「……気を付けた方がいい」  パパ「あいつは、お前のことをーーーー」  俺「ん?」  俺「パパさん?」 乍哭のパパが沈黙した。 何も言わず、ただたっている。 何かに怯えた様子で。  乍哭「ねぇ、何で俺の家にいるの?」  乍哭「危ないって言ったよね?」  俺「乍哭……」  俺「お前こそ、何で……」  乍哭「庵哩なら、こうするだろうなって」  乍哭「庵哩には死なれちゃ困るんだ」  俺「死ぬことなんか……」  乍哭「本当にパパの話を信じてるの?」  乍哭「あんなの、嘘に決まってるじゃん」  俺「……」  パパ「……帰ってくれ」  俺「……そんな」  乍哭「さ、庵哩」  乍哭「帰ろっかニコッ」  俺「あ、あぁ」
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