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答えはあたえられるものじゃない!つかみとるものだ!
また今日も先公に目をつけられる。
自分がやっている活動が活動だからかよけい。
2017年の夏は最悪の季節のまま俺を汗で満たし続けた。
◆
2017年夏現在。
頭本ツカサはいつもなるべく先公に目をつけられないように自分よりも優れた不良達をたおしていた。
いまは目立つヤンキーが少ない。
少ないだけで形を変えて生き残り続けている。
おかげでツカサは血の臭いばかり
しみている。
高校をめざす余裕もないまま中学三年生になり、正義なんてないと分かっていながら古いしきたりに洗脳された先公たちから目立たないように自分より目立つヤバい相手とたたかった。
本当はひとなみの青春を味わって好きな女子とむすばれたいと本能やインターネットでやっている恋愛番組をみながらあこがれてばかりの毎日。
いつもはケンカに勝ってばかりいるのに今回は油断してうちのめされた。
「がはっ。うぅ、くそ!こんな痛みなんかに!」
集団でつるされても余裕で逃げられるほどの身体能力があっても相手も学習して数でせまられた。
男子中学生の肉体ではいくらきたえても限度があった。
そんな時にハンカチをわたしてくれた女の子がいた。
こんな偶然はさすがにありえない。
同じ中学のバッヂ?
他のクラスにこんな子はいたか?
「こんな暗い場所にいたらあぶない。 はやく逃げろ!」
その子はハンカチのほかに包帯やバンドエイドを持参していて手当をしてくれた。
「なんでだまってこんなことを」
人助けなんて今どきするやつがいるとは。
いや・・・。
ツカサの中で人にたいするうたがいやにくしみが手当をしてくれている女の子の好意を素直にうけとれなかった。
「俺はねらわれている。 平和に生きていきたいならここを去ってくれ。 SNSにさらされたら全てを失うんだぞ!」
彼女は何も言わずツカサの傷を消毒し、包帯をまいてくれた。
「俺には好きな女子生徒がいる。 遠くない未来で傷つくことになる!」
「知ってます。 見てましたから」
彼女はその時初めて口を開いた。
だんだん女の子たちは彼氏にもとめる理想像に非暴力や倫理観を守ることを条件にしている。
当然だ。
こんなケンカだらけの男と付き合いたいやつなんていない。
手当だって彼女のきまぐれだと思ったのに。
「ツカサくんは先生にどれだけ責任を負わされてもずっと手のひふをつねって攻撃しないようにしていた。 がまんしているあなたを私は助けることができずにながめているだけ。 そんなツカサくんがひとりで現実と戦っているのに何もしないなんて卑怯だといつもなやんでいたから」
まさか告白?
よほど権力がないと暴力をふるう人間なんてカーストじゃ低いのに。
かつての歳上みたいにガラスをわったことがなくてよかった。
ってそこじゃないか。
「俺には好きな人がいる。 君にはもっと拳を使わないで守ってくれる人が見つかるはずだ。 手当してくれてありがとう。 今度は君の前で戦わないようにするから」
そういえば去ってくれると思ったのに彼女はだきしめてくれた。
こんな例えようがない、いいにおいを人間はまとえるのか。
その時ツカサは好きだった人の記憶を消した。
元々自分の住む世界とは違う人間だ。
その子には、同じ攻撃的な男子生徒で別の中学に彼氏がいることを知らないわけではなかった。
のりかえるなんて最低だと考えたツカサは恋をあきらめ、戦い続けて死ぬことを考えていたのに。
人生は思う通りにならない。
それでも手当をしてくれた彼女を最後まで守りたいと考えた。
「ここまでやってきたってことはある程度は攻略したんだな」
「彼らが知らない抜け道がある。そこを走って! 」
一緒に行こう。
ツカサたちは切りかえた。
身体を大事にしよう。
そして、おたがいに守りあおう。
ケンカだけが戦いじゃない。
それに戦うことが人生じゃないと知ったから。
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