序章 元凶

2/3
前へ
/34ページ
次へ
少女はガタガタ震える腕で、開架式書棚にある大判の箱入りの高価な美術書全集、「世界の美術」を無作為につかみ出す バラッと拡げ裏表紙の図書カードの挟まっている小型封筒にギリギリと乱暴な手つきで、強く二つ折りにした自分の封書を突っ込む 少女の無理矢理な行為に耐えきれず、ベージュ色の小袋の端が勢い余って突っ込んだせいでびりびりっと裂けた 『かまやしない』 少女は不敵に嗤う 『こんな薄汚い本、カバーが色が変色してもだれも図書カード書いてないじゃ無いの!』 急いでバタッと大判の美術書を閉じた まるで巨大な蝶が翅を閉じたみたいだった プシュッと密閉性が高いケースに何とか無茶を押して突っ込み開架書棚に元通り、強引に突き刺す 時間が無い 便箋にしたためた懺悔の手紙内容と、後、写真……! 私が病院送りになり、お節介な看護婦のせいでこれが万が一にも”証拠”として教師の目に止まったら大変な事になる こんどこそーーー……身の破滅だ! これはほとぼりが冷めたら、何食わぬ顔でこそっと取りに来ればいいものね   その時…… 何かが首筋を拭った 細いーーーー…… そっと くすぐったい何かが
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加