こん・ぽん・てきにん!

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 やいのやいのと、毎度ながらの取っ組み合いに発展する使い魔たちを、さもありなん――の微苦笑で真吾とはじめは顔を見合わせる。 「これで少しは主人離れしてくれるかと思ったんだがなぁ」 「まぁまぁ、僕はちっとも困らないから二人はそのままでいいよ」 「あなたが良くても、コンポンがべったりしているせいでお嫁さんが寄り付かなくなったら、町田家にとって大打撃なんですよ」  台所から母の百合恵が怖い顔を覗かせる。墓穴を掘ったはじめは大慌てで食事をかきこみ、席を立った。ごくごく普通の大学生がすっかり板についた彼にしたら、お(いえ)の事情はまだ先延ばしにしておきたい問題だ。 「ごちそうさまでした!」 「はじめ! ケーキがまだですよ!」 「後で食べるよ。ちょっと散歩に行ってきまーす」  コンとポンははっとして、喧嘩をやめた。 「あるじが行くならポンも行くー!」 「お守りするぞ、あるじ」  ちゃっちゃっちゃ ぽてぽてぽて――と、はじめの後に足音が続く。  月夜の下の散歩は穏やかだ。  そのうちにだんだんと、ぽてぽてぽてが先を越す。ポンは率先して、闇にわだかまる魑魅魍魎を退け歩いた。 「あるじぃ。ポン強い? えらい?」 「えらいえらい」  しかしポンは前ばかり見ているので、後ろから来る怨霊には気付かない。その都度コンが背中を守っていることに気付いているのは、はじめだけだ。 「あるじ。あれには少し厳しくしろ、付け上がらせるな」 「うんうん。……あのねコン、僕もお前に一つアドバイスがあるんだけどね」  おいでおいでと手招きし、はじめはコンを抱き上げる。大きなとんがり耳に、そっと耳打ちすることは――。 「ポンみたいな子には自分から素直にならないと、せっかくの好意も伝わらないと思うな?」 「んなっ……!!」  化け狐も、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をするらしい。 「だっ……誰があんなっ、元気だけが取り柄のなど! ああああるじの目は節穴か!」 「こらーっ、コン! あるじをブジョクする言葉は許さないぞ!」 「だ、だ、黙れ小娘、あっちへ行っていろ!」 「なんだとー!? 決闘するか!?」 「まぁまぁ、そのへんで。ほら、気持ちのいい風が吹いているよ。お月様も綺麗だし、こんないい夜を二人と一緒に歩けて、僕は幸せだなぁ」 「あるじ……」 「あるじぃ……!」  性格も想いも正反対の使い魔たちは今夜も賑やかだ。ともすると、反り返っていつ離れ離れになってもおかしくない彼らだが、はじめという要がしっかり繋ぎ止めている。  だから明日も明後日も、変わらず賑やかに違いない。 おしまい
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