プロローグ

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 創造主アネスを信仰するオーバル教の総本山、ピアリスのバチェリア大聖堂。  神聖なる大聖堂は、燭台に立てられた蝋燭が辺りを照らして幻想的な雰囲気を生み出している。 「なあ」 「静かにしろ。ここが何処だか分からんのか」  二十六時を過ぎた真夜中ではあるが、バチェリア大聖堂の最前列の柵を越えた聖域、祭壇の目の前で膝を折って祈りを捧げる男の影が二つ。 「俺は今、三度の飯より豊満な女体に飢えている」 「知らん」  口を閉じろと祈りを捧げたまま片方の男が吐き捨てるが、もう片方の男は聞く耳を持たない様子で我慢出来ないと体を捩る。 「あぁああ、ムラムラする」 「またか」 「仕方ないだろ、俺は健康で健全な成人男性だぞ」 「喧しい。くだらんことで祈りを妨げるな」 「チンコ痛い」 「下世話な。貴様それでも聖人か」  くだらない会話を小声でやり取りしつつ、数百年に一度訪れる瘴気を祓うために異世界からサーチェスに召喚された男と、オーバル教会の最高神官である男は創造主アネスに祈りを捧げる。 「あぁああクソッ。チンコがイラつく」 「神聖な祈りの最中だというのに、貴様は黙っていられないのか」 「そっちの祈祷じゃなくて、俺の亀頭が限界なんだよ」 「吐かせ」 「今すぐ抜きたい」 「貴様はああ言えばこう……減らず口を叩くな!」  我慢の限界を迎えて立ち上がると、静まり返った大聖堂に最高神官である男の激昂する声が響き渡り、何事かと夜間警備の配置についていた神官たちがざわつき始める。 「うわぁ、目立ってやんの」 「……貴様、誰のせいだと」 「俺に禁欲を強いてるお前のせいだろ」  これでも周りに配慮しているつもりなのか、聖人たる男は小声で呟いて最高神官の男を憎らしげに睨む。 「当たり前だ。お前は聖人なのだから」
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