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聖人である男を冷ややかに一瞥すると、改めて膝を折り右手を胸に当てて静かにしていろと、最高神官である男は両目を閉じる。
「口を開けば聖人聖人って、それはお前らの都合だろ。だいたいムラムラすんのも聖人の務めを果たしてる証じゃないか。一発でイイんだから娼館に行かせてくれよ」
「駄目だ。聖人が俗世と交わってはいけない。しかも言うに事欠いてなにが一発だ。言葉遣いには気を払え」
「なら聖女を寄越せ」
「それも無理だ。聖女は穢れてはならない存在だからな」
「ならばお前で手を打とう」
「貴様は気でも狂れたのか。俺は男で神職に身を置く立場だ」
最高神官である男はいよいよ呆れた様子で祈りを切り上げると、隣で卑猥に腰を疼かせる男に、道端に吐瀉された汚物を見るような視線を向ける。
「いや、お前の美貌ならギリイケる。半目? 薄目にしてみたら美女に見えないこともない」
「寝言は寝て言え」
「なんだよ、お前も男なら分かるだろ? 俺もガキじゃないから性欲に溺れたい訳じゃない。これは必然的な生理的欲求で、しかも聖人の力を使った副作用だ」
「大袈裟だな」
「本能に大袈裟もクソもあるか」
「またそうやって話を誇張して」
「誇張じゃなくて股間が膨張して暴発寸前なんだよ」
「喧しいわ、この色欲の塊が!」
最高神官である男は再び声を荒げると、聖人である男の腕を掴んでその場を離れると、神殿に続く廊下を足早に歩く。
「おい勘弁してくれよ、また独居房かよ」
「違う、反省室だ。お前には聖人である自覚と認識が足りない」
「また一人で妄想して抜けって言うのかよ。俺の脳内ライブラリーのエロスは枯渇した」
「なにをまた訳の分からんことを」
「頼む。一晩、いや一発でイイんだ。娼館に行くか娼婦を呼んでくれ」
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