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性懲りも無く悲痛な面持ちで懇願するが、願いも虚しく聖人である男は見覚えのある部屋にぶち込まれる。
「頭を冷やせ。そして神の声を聞け」
「いや俺サーチェス人じゃないし、八百万の神を推してるから」
「まずそのふざけた口を閉じろ」
簡素な部屋のベッドには拘束具が付いており、最高神官の男は聖人である男を無理やり寝かせると、手早く手と足に革の枷を付けるとベルトで固定する。
「あぁあ、チンコが切ない。これじゃ抜くことも出来ないだろうが」
「知るか!」
「拷問かよ、聖人だとか祀りあげといて、こんなの人権侵害だろ」
聖人である男は革の拘束具を外そうと暴れてガタガタとベッドを揺らし、真夜中だと言うのに大声を出して卑猥な言葉を叫び続ける。
「分かった、分かったから静かにしろ。まったく、品性どころか節度の欠片もない奴だな」
最高神官である男は、いよいよ根負けして魔法を唱えると、聖人の手の拘束を解いてあからさまな溜め息を吐き出す。
そして部屋の隅の椅子に腰掛けると、胸元から取り出した聖典を広げて膝の上に置いて俯く。
どうやらその間に処理を済ませろ、そう言う意味らしい。
「お前、他人が抜いてんのを覗く趣味でもあるのか」
「そんな悪癖ある訳がなかろう。万が一に備えて控えているだけだ。異世界人の貴様に、性の迸りでどんな作用が働くか分からんからな」
「性の迸りってなんかエロいな」
「喧しい。さっさと終わらせろ」
唸りながら頭を抱え、最高神官である男はアラビア数字の4に似た紋様を宙に刻み、両手を組んで祈りを捧げると再び眠るような姿勢で俯いた。
その様子に諦めの境地のような、あるいは絶望したような溜め息を漏らすと、月明かりだけが頼りなく照らす部屋の中に、僅かな衣擦れの音が響く。
「見るなよ」
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