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「好きでここに居る訳じゃない。案ずるな、俺は居ないものだと思え」
言葉の通り最高神官である男は、壁に同化したように呼吸さえも押し殺して気配を消した。
聖人である男はもう一度これみよがしな溜め息を吐くと、萎えた心とは対照的に一向に鎮まらない昂りに手を伸ばして、鈴口を塞ぐように握り込む。
男の昂りは握った瞬間に先走りを滴らせ、濡れた鈴口を手慣れた様子で人差し指で拭いとると、それを潤滑油の代わりにするように巧みに手を動かしていく。
息遣いが徐々に乱れて静かな部屋に淫靡な空気が流れ始めると、鈍い水音と快楽に争うような切ない声が響き、独特の匂いが立ち込める。
「んん」
昂りを弄ぶ手の動きが速くなると、鈍い水音は更に大きくなり、失禁したように鈴口から先走りが垂れ落ちてくる。
「おぁっ、ふっ」
一層速くなる手の動きに、僅かに腰を浮かして角度を変える動きを見せると、男は拘束されて動かさない足をもどかしげにばたつかせる。
「んっ、んっ、はぁあ」
絶頂が近いのか、手首を捻って昂りを握り込んだ手が激しく動き、いよいよ張り詰めた昂りがビクビクと震えると、僅かに漏れた声と共に熱が吐き出された。
「はぁあっ、は、はあ、んっ」
劣情を堪え切れずに男は甘く喘ぐと、数度にわたって熱が吐き出され、簡素なベッドが軋む音が虚しく響く。
そして力尽きたようにそのまま倒れ込み、呼吸するたびに胸元が荒々しく上下する。
吐精して身体が満足したのか、男はそのまま目を閉じていつの間にか寝息を立て始める。
「これが聖人とはな」
それまで気配を消していた最高神官である男は、スヤスヤと寝息を立てる男の脇に立つと、部屋に置かれた水差しで手桶に水を注ぎ入れ、濡らした布を絞って後始末を始めた。
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