君の名を

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 どんよりとした梅雨空が続いていた。美咲の不眠は解消されることなく、目の下のクマは深く濃くなっていくばかりだった。    ある休日の朝、美咲は瑛斗と咲凛の会話を耳にした。 「咲凛? パパと一緒に、ばあばとじいじのおうちに行こうか」  その声は心なしか小声のように感じた。 「行くー!!」  空気の読めない咲凛の嬉しそうな声が耳に届いた。 「美咲、ちょっと実家に行ってくるから」 「え、二人で?」  美咲は思わず聞き返した。 「うん、二人で行ってくる」  瑛斗の眼差しに、強い覚悟のようなものが見えた気がして、美咲は言葉に詰まり頷くことしか出来なかった。  互いの実家へは家族三人で行くのが当然のようになっていたこともあり、この不自然な行動に、何か裏があるのではないかと勘繰ってしまう。もしかすると、このまま二人とも帰ってこないのではないか、と思えてならなかった。  隙間風は嵐となる予感がした。
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