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二人を送り出したものの、あれこれと考えているうちに居ても立ってもいられなくなった美咲は、瑛斗の実家に向かう為に急いで支度を始めた。
ところが一時間もしないうちに玄関扉が開いて、スリッパの足音が近付いてきた。
「あれ、美咲、出掛けるの?」
その声に安堵し、気付けば前が見えなくなっていた。
「どうした!?」
瑛斗の驚いた声と同時に、何かが床に転がり落ちたような鈍い音がリビングに響いた。
「パパの、実家に……うっ、ひっく……私も」
「どうした、何があった?」
瑛斗が駆け寄る。
「ひとりぼっちは、やっぱり、嫌で……」
「え?」
「咲凛だけは、どうか……どうか、私から奪わないで――」
しゃくり上げながらも、美咲は必死に自分の気持ちを伝えた。
「美咲、落ち着いて。どういうこと? 何を言ってるのかさっぱりわからない」
瑛斗に背中をさすられている自分が惨めで、更に涙が溢れ出す。
「だって、パパが――」
「パパはやめて!」
突然瑛斗が声色を変え、美咲は息を飲んだ。
「咲凛は俺の実家で預かってもらってる。今は二人きりなんだから、パパはやめてくれ」
「咲凛は帰ってくる?」
「だから、さっきから何を言ってるの? 咲凛は明日まで実家で預かってもらうことにしたんだよ」
「何で?」
「美咲と話がしたかったから」
「離婚の?」
「はあ?」
瑛斗は本当に訳がわからないといった様子で、眉を寄せ苛立ちを露にした。
「瑛斗がいなくなって、咲凛までいなくなったら、私はこれから何を生き甲斐に生きていけばいいの?」
「ちょっと待って。いなくなるってどういうこと?」
「ひまわり幼稚園のそばの、ブルーの屋根の……」
「え、なんでそれ――」
途端に瑛斗が顔色を変えた。
「人伝に聞いたの」
「いつから知ってた?」
「……春頃」
「そうか」
浮気の証拠集めは、瑛斗への愛情の確認作業でしかなく、証拠をひとつ、またひとつ、と集める度に、瑛斗への思いが涙となってとめどなく溢れ出た。
「どこから話せばいい? 美咲は何を聞いたの?」
今度は穏やかな口調で瑛斗が尋ねる。
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