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「店長! 生首の仕込み私も手伝おうか?」
「まだおったんか、凛。おかんの手伝いせんでええんか? あいつ晩飯一人で作られへんやろ」
凛のおかんは俺の妹やけど、あいつは親になってからも、ずっと料理せえへん。凛は基本どんな料理でも作れる。誰の遺伝子入ってんねん思うよな。
「もう七時かー。そだね、おかあさん帰ってくるね。なぁ、店長。変なこと起きてるの私だけかな?」
「なんや?」
凛は困った顔でぼそっと告げた。
「変な声聞こえへん? 生首ラーメン食べたら」
そやな。あれから、親父、知らん女だけやなくて色んな声が聞こえる。
「聞こえるけど」
「やっぱりそう? この前、その色んな声がアドバイスくれてさ。中間テストの試験中に、答え教えてくれてん」
「めっちゃええやん」
「いいのかな? 別に害はないけど」
俺も親父を死なせた罪悪感を感じずにいられるのは、ラーメンになってからもしばらくは声が聞こえてたからや。
「常連の上田君がさ。最近、頭が良くなったって言ってて、今年こそは受かるって意気込んでた」
「なんやそれ。てか、あいつお前気ぃつけとけよ」
「ええ? 大丈夫だよ。あの人、恋愛してる場合じゃないんだから。だからさ、上田君にもなんかあったんかなって」
「あいつの心配なんてせんでええて。あいつ、逆転醤利も食べに行ってんやから」
「そうなんだ。上田くんから聞いたの?」
「いや、死んだ親父が頭ん中で教えてくれた」
「ふーん。やっぱり幻聴とかじゃないんだ。まぁ、悪いことじゃないからいいのかな」
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