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俺の店は夜も開けるようにしてる。もう昼の営業だけで細々とやらんでもようなったのもあるし、夜にラーメン逆転醤利に客全部取られるの、腹立つやん。
今は凛が店番してくれてる。あれ、なんかおかしい。客おらへん。最近うちでも並んでくれるようになったのに、なんで?
いつも通り、ラーメンスープの血生臭さとニボシが絡んでええ匂いがする。
「凛ただいま」
おらん。代わりに「おかえりなさい。失礼します」と頭を下げたのは上田君。最近、見んくなってた。てっきり逆転醤利に鞍替えしたんかと。
「なんで厨房勝手に入ってんの?」
「もうできましたから、帰ります」
「おい、ちょっと」
勝手にラーメンスープ作りやがったな。
上田君は俺が制止するのも聞かず、皿にどんと生首を乗せた。凛やんか。
「な、なんてこと」
「みんなやってるからいいじゃないですか」
「あほ、みんなやってるって、あれはただの」
「ただの? 美味しくて食べたのははじめだけでしたよ? 僕も少しは賢くなったんです。どうすれば、凛さんが僕のことを一人の男として見てくれるのか色々考えて。でも、どうしても考えるだけじゃ限界のこともあって。凛さんが僕のことをどう思ってるか知りたいんです」
「は? まさか、凛がどう思ってるか知りたいだけなん? どあほ! ほ、ほかに方法あったやろ。直接聞くとか」
「はい、今から聞きます。いただきます。あ、掛け声いただけますか? ラーメン出すときの」
「ええ、ええ加減にせえ。凛、おい、凛。なんてことしてくれたんな。凛は、まだ十四歳やで」
「十四歳をバイトさせたら捕まりますよ。労働基準法では十五歳になって最初の三月三一日を過ぎてからじゃないと――」
「もうそれ以上喋るな黙って食え! 生首いっちょう!」
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