生首ラーメン

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 俺は混乱してたけど、ほかの客は平気みたいや。それに、客がレジで何かを渡してる。  ビニール袋で何重にも覆われたそれの大きさに既視感がある。 「これでお願いできますか? 裏で渡した方がいいですか?」  客は妙にそわそわしてる。 「あの、誰かは聞かないですよね」 「あー、どうしよ。店長!」  レジの男性店員が呼ぶとカウンターの奥から店長が出てきた。バイトの子と年齢がほとんど変わらん若い兄ちゃん。寝屋川にある摂津大学卒業後すぐ、一年ラーメンの修行して、この店開いた変わり者。顔は醤油顔とか塩顔ってやつや。醤油顔やのに塩顔って言われるって前愚痴零してた。そんときも俺はこの店の新作ラーメンの偵察に来てた。そやから、向こうも俺のこと知ってる。 「受け取って。明日来てくれたらスープになってるから。優先整理券と回数券渡したって」  なんやそのサービス。ほかの客もざわついてる。なんやなんや。みんな同じこと考えたんちゃう?  生首って持込OKなん?  ビニールから若干透けて見える肌の色と真っ黒な頭髪。どっから持ってきたん? 〈わし、そろそろ成仏しよかな〉  親父今更なんやねん。てか、俺の生首ラーメンははじまったばかりや。もう少し見てけや。もうこいつらに真似されとるけど。 〈お前、気ぃつけや〉  遺言みたいなんやめて。ほんま冗談きついわ。親父? 親父? 親父!  女の声も聞こえへんなった。
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