生首ラーメン

　生首ラーメンは、死んだ親父が俺の頭ん中で〈わしの生首でだし取ったんやから、生首ラーメンにせえ！〉ってうるさくてかなわんから、言われたとおりに命名しました。

　でも、親父。もう親父は死んでもうたんやから、この『ロンゲラーメン大阪天六店』を俺に任してそろそろ成仏してくれや。

　そりゃ、俺も悪かった思うてる。まさか親父が脳卒中で倒れたとき、運悪くラーメンスープに頭から突っ込んでる思わんやん。すぐに警察と救急車呼ばんかったんわ、堪忍な。今食糧難やんか、どの国も。そんで葬儀に出すより豚の飼料として遺体を回収してもろた方が、葬儀費ゼロ円で、故人提供補助金出るやんか。でも、俺、あの制度反対なんよ。豚に食われて、その豚スーパーに回ってくるねんで？　最恐のＳＤＧｓやんか。せやったら、親父の首から上だけでも、何とか救いたいやんか。親父、何時間ラーメンスープに顔浸ってたか知ってる？　スープ作る時間ときっかり同じ、十二時間やで。朝見てびっくりやったわ。

〈まぁ、美味しかったらええじゃろ健一(けんいち)〉

　そやな。確かに親父の頭皮から首の皮までべろーって広がって脂肪分が豚の背油みたいに浮かんでて、めっちゃ旨かった。脳みそも鼻から薄茶色のだしになって溶け出てたから、濃厚になっとった。