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母が僕を置いて、失踪した。
どうやら駆け落ちらしい。悲しいという感情はなく、むしろ男にだらしない母らしいと納得してしまった。
母子家庭で身寄りのない僕は施設に預けられそうになった。
しかし、そんな僕を引き取ってくれる奇特な人物が現れた。
名前は小宮雪兎。僕の遠い親戚で、年齢は37歳、独身。小宮雪兎についての情報はそれくらいしか分からなかった。
数日後、彼が住んでいるマンションに向かった。
「ここか……」
玄関前に立ち、一つ深呼吸する。
不安と緊張でいっぱいだ。
そもそも、小宮雪兎はどんな人物なんだろう? 名前から小柄なイメージがする。怖い人じゃなければいいな。
僕は意を決して、チャイムを鳴らす。
しばらくしてドアが開いた。
目の前には身長が180cm以上はありそうな大男が立っている。瞳は鋭く、殺し屋のようで、小宮雪兎という名前とは相反する見た目だった。
ああ……、さよなら。僕の穏やかな日常。
僕は心の中で泣いた。
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