青眼の姫様

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「赤子……ですね」  正道と高山は互いに顔を見合わせる。 「き、狐が化けているのでしょうか?」 「……分からない」  正道は静かに首を横に振った。正道はごくりと生唾を飲み込むと、恐る恐る光る籠の一つに手を伸ばした。  しかし、あと少しでその手が触れるというところで、急に籠の光が消えた。浮力を失ったのか、籠はどさりと音を立てて河原に転がった。 「あぁっ!」  正道は落ちた光の籠を慌てて拾い上げる。見れば、中にいた赤子は落ちた衝撃も気にせず、すうすうと寝息を立てていた。 「よ、よかった」  正道は胸を撫で下ろす。そして、もう一方の光の籠に視線を移す。そちらは未だにふわふわと浮いていた。正道は数巡悩んだ後、残りの籠へ手を伸ばした。すると、先ほどと同じようにまもなく指が触れるというところで光が消え、浮力が切れたように籠が落下したが、今度はしっかりと受け止めることができた。  正道は二つの籠を河原に並べて置く。先ほどまで泣いていた赤子も、正道が籠を抱き止めた後は泣き止み、静かに眠りについた。 「小十郎。其方、しばしここでこれらを見ておれ」 「え? 井上様はどちらへ?」 「俺は、これらに関わりのありそうな物がないか、近くを調べてくる」  高山に赤子たちを託した正道は、周囲の捜索のためその場を離れた。  後に残された高山は、途方に暮れた顔で残された二つの籠へ交互に視線を送る。 「俺一人でどうしろと……」  そう独り言ちるが、返事をする者など誰もいない。それどころか、先ほど泣き止んだばかりの赤子が再び小さな声でぐずり出した。 「参ったな……井上様はいつお戻りになるんだ……」  高山は恐る恐る籠の中を覗き見る。最初は物怪の類かと恐れ慄いていた高山だったが、その泣き声は人の赤子のそれにしか聞こえず、次第に冷静さを取り戻した。 「えーい! こうなりゃヤケクソだ!」  高山は、赤子を籠から抱き上げると、腕に抱いた。そして、赤子をあやすようにおっかなびっくり揺する。どのくらいそうしていたのか、やがて、赤子は心地よさそうな寝顔ですぅすぅと寝息を立て始めた。その様子を見た高山は安堵の表情を浮かべる。  しばらく辺りを探し回っていた正道は、これといった手掛かりは見つけられず、やがて高山が待つ河原へと戻ってきた。 「お? どうしたんだ?」  赤子を抱きかかえた高山の姿に正道が目を丸くして問いかけるも、当の高山は困ったように首を傾げる。 「何故か、籠に入れると泣くんですよ。コイツ」
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