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そう言って高山は腕の中の赤子を見せる。腕の中にいる赤子はすやすやと気持ち良さそうに眠っていた。正道はそれを見て、ニヤリと笑う。
「随分と懐かれたもんだな」
「ピーピー泣くから、仕方なくです」
揶揄う正道に高山は口を尖らせて反論する。そんな高山を横目で見ながら、正道はもう一人の赤子へ近づいた。こちらは相変わらず穏やかな寝顔で眠っている。
「こっちは、えらく肝の据わった奴だな。ぐっすりと寝ていやがる」
赤子を籠に戻している高山に向かって正道は感心したように声をかける。高山は、正道の言葉に苦笑いを浮かべた。そして、ふと思い出したように言う。
「そう言えば、井上様の方の収穫は何かありましたか?」
「いや、特に何もなかった」
正道は首を振り腕を組んだ。その眉間には皺が寄っている。
「そうですか……こいつら一体何なんですかね」
高山も腕を組むと、己の顎を撫でながら首を傾げた。
「さぁな。だが、まぁこうして拾った以上は、このままここに置いていくわけにもいくまい。もう、朝晩は随分と冷えるようになってきたしな」
正道は空を見上げ、風の冷たさにぶるりと体を震わせた。先ほどまでは煌々と輝いていた月も、いつの間にか厚い雲に覆われてその姿を隠している。
正道の言葉に、高山は腕を組んだまま難しい顔で唸るばかりだ。
「でも、どこへ連れて行くんです?」
「まぁ、町はずれの寺だろうな」
「い、いいのですか? 普通はそうでしょうが、こいつらは……」
正道は高山の言葉を遮るように赤子の入った籠を一つ抱えた。そして、そのまま河原を後にして歩き出す。高山も慌てて残りの一つを抱えると、不安げな顔で正道の後を追った。困惑している高山の心中などお構いなしに、正道はどんどん先へ進んでいく。
やがて町はずれにある寺へたどり着いた二人は、境内に足を踏み入れた。寺の本堂は暗く静まり返っており人の気配がない。正道は高山に赤子たちを任せ、本堂の裏手へと回ってみた。しかし、どこもかしこもひっそりとしており、人がいないことは明白だった。
頭を掻きながら戻ってきた正道の様子から、高山は状況を悟る。
「どうしますか?」
「これはもう連れて帰るしかないか」
「……大丈夫なんですか?」
正道の言葉に高山は顔を曇らせる。一方の正道は気楽そうに答えた。
「まぁ、大丈夫だろう。普通の赤子ではなさそうだが、人を襲うような輩ではないと思うしな。もしそうなら、俺たちはとっくにやられているだろうし」
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