童話 ほっぺにいっぱい

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 この前、ようちえんの遠足(えんそく)でどうぶつえんに行ったんだ。  お父さんとお母さんと、3人で行ったことはあるんだけど、おともだちとみんなで行くのははじめてだったから、すごく楽しみだった。  どうぶつえんに行くバスの中で、(しょう)くんが芸人さんのモノマネをしたからみんなで大笑いした。みんないつもより元気でテンションが上がってたな。  そしてバスが駐車場(ちゅうしゃじょう)についたら、先生についていってどうぶつえんに入った。入ってすぐのところには、ぞうさんとかきりんさんがおっきい体をノシノシって(ある)いていた。たまにこっちを見てきたからちょっとこわかったけど、ビビってるって思われたくなかったから、ぼくは一番さいしょに走っていった。  お昼ごはんを食べてから、ぼくたちはどうぶつえんのまんなかにある「ふれあいひろば」にやってきた。ぼくたちはじゅんばんに長いベンチにすわって、なにをするんだろうって話しながら始まるのをまった。そしてみんながすわったのを見て、女の人がぼくたちの(まえ)に立った。 「みんなー、今日は楽しんでますかー?」  女の人が明るい声できいてきたから、ぼくたちも「はーい」って大きな声でおへんじをした。 「これからうさぎさんとモルモットちゃんが来ますよー。やさしくさわってあげてねー」  そう言った後、何人かの大人が小さいどうぶつをつれてきてぼくたちにさわらせてくれた。そして、ぼくの前に来たのは太ったネズミみたいな生き物だった。ブチもようのこの生き物はキョロキョロと首を回してあちこちを見ている。とまどってたぼくを見て、スタッフさんがそっとぼくのてのひらにモルモットを()せてくれた。 !! なんだ、このふわふわの生き物は! あったかくて、トクトクトクって心臓(しんぞう)がめっちゃ早く動いてる!  ぼくはめちゃくちゃ感動(かんどう)して、そのままの姿勢(しせい)で固まったまま、モルモットのぬくもりを楽しんだ。  遠足から帰ったぼくは、お父さんとお母さんにあのどうぶつについて話して聞かせた。 「あのね、どうぶつえんでね、ちっちゃいのを手にのせたの!」 手のひらを包むようなジェスチャーをして、ぼくは何度も何度もくりかえし話をした。そしてこうおねがいをした。 「ねえ、家でかえないかな?」  お父さんとお母さんはちょっと困ったかおだったけど、ぼくは今までこんなにたのむことがなかったから、さいごにはオーケーしてくれた。 「可愛(かわ)くてもぬいぐるみじゃなくて生き物なんだから、ちゃんとお世話をしなさいね」 ってクギをさされたけど。 【つぎのページにつづく】
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