童話 ほっぺにいっぱい

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 それから数日後。  ついにその時がやってきた。  いつかのごとく、ハムは一心不乱(いっしんふらん)にエサを口に入れだしたのだ。それを見たぼくは、急いで戸棚(とだな)に入っているおかしのカゴから一つのふくろを取り出した。そのままそのふくろを持ってハムのところまで来たぼくは、おかしのふくろをおもいっきり開けた。  ぼくが持ってきたのはマシュマロだ。やわらかいおかしなら大丈夫だと思ったぼくは、次々と白いマシュマロを口に入れる。今度ハムがまた口にいっぱい入れる時に、ぼくもいっしょに食べたいと思っていたのだ。ぼくたちは口の中におやつをいっしょうけんめい集めていく。  いつの間にか見ていたお母さんは、大きな声で笑いながらスマホをかまえている。ぼくはもう入りきらないぐらいつめこんで、ハムの横からお母さんにピースした。お母さんはシャッターチャンスとばかりに写真をとった。カシャカシャと連続(れんぞく)でとる音もしたけど、お母さんの笑い声が一番おっきくひびいてたと思うな。  写真をとりおわったお母さんがまだヒーヒーと笑ってる横で、ぼくとハムは口の中のおやつをむしゃむしゃと食べた。口いっぱいに入れすぎたぼくは、つばでマシュマロをとかしながら何とかぜんぶ食べきることができた。  そしてごっくんとぜんぶ飲みこんで、ふーっと一息ついたぼくに、お母さんが今とったばっかりの写真を見せてくれた。そこにはほっぺたがまんまるにふくらんでいる、ぼくとハムのとくいげな顔が画面いっぱいにうつっていた。  それがぼくはすごく面白くて、ころがりながらいっぱい笑った。でもそんなぼくを見もしないで、ハムは回し車をカラカラと回してた。お母さんもぼくたちを見て笑っていたけど、今度は声を出さないでニコニコしてて、とってもうれしそうだった。  ・・・あ。  でもあの後に「あぶないからもう口にいっぱい入れちゃダメ」っておこられちゃった。  お母さんだってあんなに笑ってたのに、ヒドイよなあ。 【おわり】
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