婚約破棄は計画的に。

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 録音機から流れる、グレアム殿下とエミリアの会話。これを聞いたとき、本気で一発殴ってやろうかと考えたわ。誰が悪魔だ、誰が!  ちなみにマルコムさまは腐敗しきった貴族の中の貴族って感じの人。あ、あとものすごく女好き。彼の屋敷で働いているメイドたちは、全員彼の毒牙にかかっているという噂。他にもいろんな噂が飛び交っている人なのよね……もちろん、悪い意味で。 『ねーぇ、グレアム殿下ぁ。エミリアと一緒に生きてくれる?』 『当たり前だろう。その前に、アイリーンには消えてもらわないといけないな』 『きゃっ、消えてもらわないと、なんて……グレアム殿下、頼もしいですぅ』  甘えたようなエミリアの声。それから砂糖をどろどろに溶かしたようなグレアム殿下の声。  こんな人たちが国のトップに立って大丈夫なんだろうか。いや、大丈夫ではないだろう。 「……あなたたちがどんな会話をしようが、私には関係ありませんが……。勝手に婚約者を決めないでいただけますか?」 「そ、そんなものは知らん! お前が仕組んだ罠だろう!」 「ええ、まぁ、仕組んだといえばそうかもしれませんが。まさかこんなにあっさりわたくしを陥れる証拠が録音されるとは思いませんでしたわ」  頬に手を添えて、わざとらしく肩をすくめる。  確かに、会話が録音できるように仕組んではいたのだけど……こんなにあっさり録音されるとは思わなかった。わたくしのことを心配して、録音機を渡してくれたメイドに感謝しかないわ。
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