婚約破棄は計画的に。

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「エミリアさま。婚約者のいる異性に胸を押し付けるなとか、わざとらしく被害者ぶるなと、わたくし……きちんと忠告しましたわよね? それなのに、グレアム殿下とそういう仲になっているのですから……あなたたち、自分の気持ちしか優先できないのですか?」  呆れたような言い方をしてしまった。……いや、実際呆れてはいるのだけど。 「貴様! エミリアをいじめていたのか!」 「いじめ? 忠告しただけですわよ。殿下はご存知ないかもしれませんが、エミリアさまは婚約者のいる異性だけを狙って、アプローチしていたのですから」  ばっとグレアム殿下がエミリアに顔を向ける。彼女はますます顔を青ざめさせた。  エミリアに声をかけられた男性の婚約者たちが、わたくしの近くに集まってきた。それに気付いて、エミリアはむっとしたように唇を尖らせる。 「まぁ、中にはそんなエミリアさまを嫌う男性もいらっしゃるようですが……」  ぽそりとつぶやく。前世でどうしてこの恋愛小説を読んでいたのか――自分の気持ち優先なヒロインとヒーローは正直どうでもよくて、そんなふたりを冷めた目で見ている人を推していたからだ! 「なっ! エミリアを嫌う人間など、人間ではない!」 「……洗脳でもされているのですか?」  エミリアを嫌う人間がいるはずないって、どういう発想? 怖い。  ……小説の中の強制力ってやつなのかな?
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