婚約破棄は計画的に。

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「なっ! ルイス兄上!」 「ルイスさまぁ……、ひどいですぅ……!」  なにがどう酷いのかを、教えてほしい。 「ひどい扱いを受けたのは、わたくしたちのほうなのに……」  ぽつりとつぶやく。  ……このパーティーはもう楽しむためのパーティーではなくなってしまった。  ひそひそと話をしている人が多いし、雰囲気は重苦しいし、ね。 「この件に関して、グレアムとエミリア嬢は陛下の謁見室に来るように、との伝言だ。……令嬢たち、彼らになにか伝えたいことはありますか?」 「……たくさんありすぎて、まとまりませんわ」 「わたくしも。ですが、これだけは言えますわ!」  わたくしの近くに集まった令嬢たちは、きっと視線を鋭くしてエミリアを見る。そして、口を揃えてこう言った。 「真実の愛は、段階を踏んだものが言えること!」  ……本当にね。思わず同意のうなずきをしてしまう。  グレアム殿下とエミリアとの愛が『真実の愛』というのなら、彼らはきちんと段階を踏まなくてはいけなかった。  きちんとわたくしと婚約を破棄してから、周囲に宣言すれば良かったのよ。  わたくしと婚約したまま、こんなところで見せつけるかのように婚約破棄を宣言しようとしたのだ。しばらく、彼らは有名になるだろう……もちろん、悪い意味で、ね。
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