婚約破棄は計画的に。

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「どうして? どうしてそんなに怖い顔をみんな、しているんですかぁ? エミリアはただ、みなさんと仲良くしたかっただけですのにぃ……」 「そうだぞ! エミリアの気持ちを無視するな!」 「……わたくしたちの気持ちは、無視しても良いのですか? ……ああ、でも、グレアム殿下が婚約破棄を伝えられたので、ようやくわたくしも素直になれますわね」  緩やかに口角を上げて、グレアム殿下とエミリアを見る。  怪訝(けげん)そうに表情を歪めるふたりから、視線を外し……ルイス殿下と向かい合う。 「お慕いしております、ルイス殿下」 「――アイリーン嬢?」 「グレアム殿下との婚約は白紙になるでしょう。……こんなわたくしですが、どうか……ルイス殿下の婚約者にしていただけませんか?」  ルイス殿下に、婚約者がいないことは知っている。  小説の中で、何度もそのことについて触れられていたから。  ざわついていたパーティー会場は、一瞬でしんと静まった。  ルイス殿下は驚いたよう目を丸くしていたけれど、すぐにわたくしの手を取って、手の甲へ唇を落とす。 「……喜んで、お受けします」  正直、フラれると思っていたんだけど、まさかの成就!?  顔に熱が集まってきているのがわかる。それを見たグレアム殿下が、声を荒げて割って入ってきた。 「アイリーン! 俺に対してそんな表情をしたことないじゃないか!」 「なによ、そっちだって浮気していたんじゃない!」 「……いいえ、わたくしはあなたたちと違い、浮気しておりません。この想いは墓場まで持っていく予定でしたから。……それでは、お父さまたちに婚約の許可をいただきに行きましょう、ルイス殿下」 「はい、アイリーン嬢。……グレアム、エミリア嬢。陛下がお待ちなので、早く謁見室に向かうように」
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