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 タキはマージナルである。偉大なる始祖グリモアの力を分け与えられた子の一人だ。  その『力』は物質の原子への干渉。すべての物質を原子レベルへ分解、分裂や再構成による新たな原子の生成、原子の結合による任意分子への再構成を行うことができる。  卵型の作業場で生まれた熱量は隣接した大型かつ多数の蒸気発生器で蒸気を生み出し、それ以上に多くあるタービンを回して莫大な電気を起こす。その電気は別のマージナルによって保存、分配され、都市や周辺の町や村々に供給されていた。  灼熱と高圧の空間の中では原子が結晶化し、純化した物質がペリットとして積み上がる。光がおさまると別のマージナルたちがそれを運び出す。その間にも新たな廃材が作業場に持ち込まれた。  タキは、核分裂と核融合の最中を過ぎてもまったく影響なく、床に落ちた小さなネジや装甲を丁寧に拾い集める。タキが意図して分解しなかったものだ。  都市において廃材を横領するのは罪だ。質量保存の法則に基づいて重量は厳密に管理されている。しかし再合成時に失われる酸素などの重量は控除されるため、その範囲内で部品を集めていた。
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