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 マージナルの管理居住区にある部屋へ掌認証の扉を開けて入る。  中は宇宙船の内部のようで無数の星屑を散りばめたような夜景が広がる。その景色には目もくれず、タキは部屋の壁の一角へ向かう。壁に偽装されたそこにはロッカーほどの秘密の空間がある。中には金属質がむき出しのシスナルが一つ立っていた。  タキは今日拾った部品をシスナルに組みこんでやる。廃材で少しずつ構築した機体だが、随分と形になってきている。  ものに魂が宿るなんて非科学的だ。わかっているのにタキは『何か』を感じた部品集め、彼らが最後に残した言葉がシスナルの姿を借りて語られる可能性を探す。  都市は稼働可能なシスナルを持たず、作らず、持ち込ませずを貫いている。部品の横領も含めて罪だ。それを行う自身が壊れている自覚はある。  不良品認定されたマージナルは同種のマージナルと共にまとめて融解ポッドで溶かされ、培養ポットで新たなマージナルとして作り直(リサイクル)される。  そのことに対する恐怖はない。悲しみもない。感情などどこにもないから。 「シスナルとマージナル、どちらがモノなのだろう」  呟いて、タキはぱたん、と扉を閉める。  明日も、何事も変わらない一日なる。そのはずだった。
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