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その後ファストフード店で簡単に食事を済ませ、『ゲーセンに行きたい!』と騒ぐ亮平の先導で繁華街のゲームセンターにやってきた。
喧騒の中、色とりどりのライトが店内を照らし、同じように夏休み中の学生と思しき少年少女で賑わっている。
「これこれ! このぬいぐるみ! おねぇが好きでさー、取れっかなー?」
「リョウ、散財し過ぎるなよ?」
ワクワクとしている亮平をやんわり牽制する昭彦の後ろで、入店からずっとしかめっ面をしている尚斗を振り返る。
「……尚斗?」
「……目がチカチカする、凄いうるさい」
趣味が読書で日常殆どを音と触れ合うことなく生活している尚斗にとって、この喧騒は騒音以外のなにものでもないんだろう。
俺はといえば弟の拓海相手にゲームもするしゲーセン通いもしていたことがあるから、尚斗よりは耐性がある。
「大丈夫? 店の外出てる?」
「……もう少し静かなコーナーならなんとか」
事情を昭彦に説明し別行動を取る事にする。アーケードコーナー傍、二階へ続く階段の脇にベンチを見つけ、とりあえず音の少ないその場所へ尚斗を連れて行った。
「耳栓ほしい」
「まぁ、ゲーセンなんてこんなもんだから」
ベンチに座ってウンザリする尚斗が不服を言うのが可愛くて思わずクスリと笑いを漏らす。
「月冴、なんかやりたいのあったら見てきていいよ……俺はここで本読んでるから」
ガサ、とバッグの中を漁り、文庫カバーのかかった本を一冊取り出す。
機械犇めく店内よりいくらかマシとは言え、この喧騒の中で本など読めるのだろうか?
「持ってきた本は読み終えてるから返すって」
「読みかけの文庫持ってきた」
まさしく本の虫だ。いったい尚斗のバッグの中には何冊の本が入っているんだろう。
「いたいた。月冴、尚斗、ちょっと来て」
フロアをキョロキョロしながら早足で巡回していた昭彦がこちらに気づいて手招きをしている。二人で顔を見合わせ、彼の後に続いてフロアを巡った。
「だーっ!! また負けたっ!! くっそ」
「何してるの? 亮平は」
対戦型のアーケード機の前で憤慨していたのは亮平だった。
今注目されている、物理的なカードデッキを必要とせず、サーバー内に登録されたデジタルカードをタッチ画面で操作してプレイするトレーディングカードゲーム。確か拓海もハマっていて見せてもらったことがある。
データの保存には専用のアミューズメントカードが必要だったはずだけど、亮平は所持しているみたいだ。
「さっきから惨敗しててさぁ。新規登録の時に貰えるトライアルカードのままっぽいんだけど、やけに強くて」
「亮平ってこういうの得意なの? あーでも、学校でもトランプとかは強いか」
悔しそうな顔をしている亮平に声をかけると、思い切りこちらを向いてクワッと目を見開く。
「得意だぜ? あぁそうとも! それでも勝てないオレのこの気持ち解るか!? なぁ、月冴!!」
ガクガクと両肩を掴まれ揺さぶられる。相当に悔しいらしい。
「ちょ、亮平……苦しい」
「やめなさいってリョウ、落ち着け」
「コレが落ち着いていられるかァァァ!!」
制止する昭彦を無視してなおも俺のことを揺すってくる。
なんか酔ってきたカモ……。
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