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ユイちゃんは、うさぎのおうちの中で一生懸命ごはんを食べているうさぎの1番端っこの赤ちゃんうさぎを指さして、
「このこ、すき」
「どうしてこのこがすきなのかな?」
怖がらせないように、ゆっくりと聞く。すると。
「レオくんににてちっちゃいもん」
「レオくん?」
繰り返して聞くと、ママが
「ああ。レオっていうのは、ユイちゃんの弟で。今1歳で、家で祖父母に面倒を見てもらっていて。実は、レオくんに付きっきりでお世話をしていたからか、ユイちゃん少し拗ねちゃって。だから今日はずっとユイちゃんが行きたがってたこのお店に連れてきたんです」
「まだ小さいのに、ジェラシーってやつですかねえ?」
パパも明るく笑う。
綾人はそんな事情があったのかと頷き、ユイちゃんに目線を合わせた。
「そうかあ。このこレオくんに似てちいさいもんね。ユイちゃんもうさぎさんとたくさんふれあって、たくさんママとパパと思い出を作ってね」
「うん!」
パパの足の後ろから目を少し覗かせて、ユイちゃん達は「飲食スペース」に向かっていった。
綾人はうさぎ達がごはんを食べ終えるのを待ち、うさぎのおうちの隅にたまった麦チョコに近い物体の掃除をしていった。うさぎ達の身体から出てきたものだ。その色や大きさを確認しながら、うさぎ達の健康チェックを行う。色、大きさともに異常なし。給水器に新しい水を入れ替えて、朝の掃除を完了させた。うさぎ達はお腹がいっぱいになったのか、くっつきながらみんなで眠りにつき始めている。そんなうさぎ達を見つめながら、綾人も微笑ましく思う。ユイちゃんという女の子はきっと良いお姉ちゃんになるに違いない。赤ちゃんのお世話は本当に大変だから、ママやパパに構ってもらえなくて少し寂しかったんだろうな。かわいらしいお姉ちゃんのジェラシーに、ちょっと心がくすぐったい。
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