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きょとんとする私に、弓槻さんがリストを見せてくれる。
「ほら、ここからここまでが最初にあった項目。ここから下が、私らが追加した項目。最初に書いてた項目って、もう全部終わってるんだよ」
言われてみれば、上に書かれていたものは全部線が引いてある。まだ残っているのは、後から追加したものばかり。終われば次々追加すればいいと話していたから、なんとなくリストは終わらないものだという認識でいた。
けど、明確に最初のものと追加したものでは違う。だって後から足したものは、新しい経験をして、楽しむための項目だから。
「実験の第一段階は、終了ってことでいいんじゃねえ?」
「そういう観点も、ありますね」
「あるある。この際だからさ、リスト分けようよ」
そう言って、弓槻さんは上下のリストの間に線引きして、二つに分けた。それを見たナオヤくんは、なんだか感心していた。
「なるほど。ここから上がプロトタイプ実験、下は青春実験……といったところでしょうか」
「プロトタイプ?」
「何それ?」
またしても、二人にとっては初出の言葉で、目を丸くしていた。
「え、えーとね……」
私は、たどたどしくも説明した。あの日、ナオヤくんと交わした言葉を。
もしかしたら二人は、また気分を害してしまうかもしれない。そう思ったけど、そんなことは、杞憂だった。
「はぁ~なるほどなぁ。オリジナルを完成体と考えて、それに近づこうとしている試作段階のプロトタイプ……か」
「なんか深海くんらしい名付け方だね。ちょっと機械みたいだけど」
「恐縮です」
「ごめん、褒めてはいない……」
弓槻さんがちょっとだけ辛辣に言う間に、加地くんは妙に感心したように、うなり声を上げていた。
「だけどさ……それでいくと、俺たち全員、プロトタイプなんじゃねえ?」
「……え?」
皆が振り返る中、加地くんはものすごく自慢げに語った。
「だってさ、確かプロトタイプって……後で改良するって前提で、作る最初のパターンだろ? 確かにクローンとオリジナルの関係にも当てはまるけどさ、オリジナルがいなくたって、誰だってそうじゃん。10年後とか20年後に『こうなっていたい自分』ていう完成像を想像してて、今それに近づくために色々試行錯誤してる……てことだろ?」
「……あぁ、そっか」
弓槻さんがぽんと手を叩き、私とナオヤくんは目を見合わせている。
「加地くんは、発想が豊かですね」
「いやぁそれほどでも……」
「でも、それいい……! よし、実験続行、決定! 我々人生のプロトタイプによる、青春実験!」
「賛成!」
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