13人が本棚に入れています
本棚に追加
当然、行く――
そう言いたげに、3人で頷き合った。そう、思っていたのだけど……加地くんは私のリスト端末に向けて横入りして話し始めた。
「あ、おばさん。加地っす。俺、今日は家の手伝いがあるから行けないです。すみません」
続いて弓槻さんも、私の端末に向けて話した。
「弓槻です。私も今日は部活があって、行けないんです。ごめんなさい。行くのは、天宮ヒトミちゃん一人です」
「え!?」
三人で行くものと思っていたのに……!
私の混乱はよそに、おばさんは「そう」とだけ言って、コールは終了してしまった。
一人で行くことが、確定してしまった。
「加地くん、弓槻さん……なんで!?」
縋るように言うと、加地くんは困ったように顔を背けた。
「いや、明日は行くぜ? でも今日は……なぁ?」
加地くんはそう言って視線を弓槻さんに向ける。弓槻さんは、頷くとまっすぐにこちらを見返して言った。
「あのねヒトミちゃん、言い出せなかったけど、あの日……かなり重要なこと、話してたよね。深海くんのことで……」
思わず、肩が跳ね上がった。
そうだった。あの時、二人は私たちが話していた教室のすぐ外にいたんだ。ドアは閉まっていなかったから、外に声は聞こえていた可能性が高い。
「あ、あの……あれは……」
あたふたする私を、加地くんと弓槻さんが左右から宥めた。
「いいんだよ。深海が話していいって思ったら、聞くからさ」
「でもさ……あの時あんな話をしたのって、相手がヒトミちゃんだから、なんでしょ?」
「それは、まぁたぶん……」
「うん。事情は知らないけど、そんな大事な話ができる人が、一番会いたいんじゃないかなぁって思うんだよね」
「加地くん、弓槻さん……」
そんなたいそうな関係じゃない。ただ、同じクローンで、オリジナル同士が仲良くて、記憶の内容に共通部分がある……ただ、それだけの関係なのに。
だけど、加地くんも弓槻さんも、譲らないようだった。
私も、断ろうとは、思わなかった。
ナオヤくんに会いたかった。皆と一緒の時のナオヤくんではなくて、私と一緒にいるときの、私の姿を瞳に映すナオヤくんが。
私は、二人の厚意に甘えて、そのわがままを通すことにしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!