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放課後。校門の前に、私とナオヤは並んで立っていた。立ったまま、歩き出せずにいた。
「寄り道って……何するんだっけ?」
「それは決めていませんでした」
私たちの周囲では、他の生徒たちが部活に勤しんだり、授業から解放された喜びの声をあげていた。
当然、棒立ちの私たちは奇異の目で見られる……。
「『寄り道』はまっすぐ帰宅せずにどこかに寄ること。あまりにも行動範囲が広すぎました。すぐに寄り道先の候補を挙げましょう」
ナオヤは素早く携帯端末を取り出す。この辺一帯の地図を開いて、画面を拡大する。私の方は、あのメモを開いた。二つを見比べて、はたと思いつく。
「この店に行かない?」
そう言って地図の一点を指さす。そこはチャイニーズフードのお店だ。それも、昔ながらの『四川料理』とやらが絶品と有名で、食べた人は皆、汗だくになって店を出ると噂の。
「なるほど。リストを二重にこなすんですね」
そう。実験リストにはもう一つ……『激辛料理を食べる』とある。この店に行けば、『寄り道』と『激辛料理』両方を一回で完了できる。
「良案かと思います。では、行きましょうか」
くるりと踵を返して、ナオヤは歩き出す。その速度が思っていたよりもゆっくりで、少し意外だった。尚也くんは少しせっかちだったから。
「あの……もしかして、愛の歩幅に合わせてくれてる?」
「え?」
尋ねると、意外そうな顔で振り返った。どうも違ったらしい。
「えっと……私、そんなに遅くないから、もうちょっと速く歩いても大丈夫だよ」
「ああ……はい。そうですね」
そう言うと、ほんの少し早歩きになった。そんなに変わりはないけれど。
だけど本当に、『愛に対する気遣い』は私には必要ない。私が再現しないといけないのは、そういうところじゃないのだ。
余計な気遣いはさせないように注意しないと。そう思って、ナオヤに続いて歩き出した。
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