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「す、ストップ! ナオヤくん、それ以上は……!」
「……あ」
私が止めると、ナオヤくんははっとしてレンゲを置いた。どうも美味しさのあまり無意識で食べていたようだ。とっても危険だ……。
止まってくれて良かった。
「危ないところでした。さすがにこれ以上は、健康に支障をきたします」
「うん、うん。あとは私が完食するから」
そう言って、そろっとレンゲとお皿をナオヤくんから取り上げた。そして入れ替わるように、ナオヤくんの目の前に牛乳のコップが置かれた。加地くんが用意してくれたみたいだ。
「これ飲んどけ。ちょっとはマシになるんじゃないか?」
「ありがとうございます。でも、あの刺激をなかったことにするのは、忍びないですね」
「いいから飲め。命のために」
「……はい」
その言葉が大袈裟でもなさそうな辛さだから余計に、大人しく飲んでくれてホッとした。それは加地くんも同じだったようで、ため息を漏らした私と目が合った。そして、苦笑いを浮かべながら言うのだった。
「大変だな」
私は曖昧に笑い返すしかできなかったけど、ナオヤくんは何故か大きく頷いていた。
「確かに大変ですね。挑戦するにも、毎回、限度を考えなければ」
「ああ、うん……そうだね」
「ともあれ」
そう言って、ナオヤくんはまた例の『実験リスト』を端末から呼び出していた。そして私にも見えるように広げると、指で画面に触れた。
ナオヤくんの指を感知して、その動きに合わせて色が塗られていく。
そして『激辛料理を食べる』と『寄り道をする』の項目が、マーカーのように赤く塗りつぶされたのだった。
「この二つは、実験成功ですね」
何を以て成功としているのか、よくわからなかった。けれど、無表情な中にも満足そうに声を弾ませる様子を見ていたら、こだわる必要はないかと思えた。
わかりにくいけれど、今、ナオヤくんは楽しいのでは? そう思ったら、なんだか私も、胸の奥がぽかぽかして、ふわりと軽やかな気分になった。
「よし! じゃあ激辛、攻略するぞ!」
この気分のまま、実験を本当に成功に導こうと、私は渾身の力で挑んだ。
結果は……健闘虚しく、惨敗。
加地くんたちお店の人に謝って、降参したのだった。
この調子だと、これからも実験は本当に大変そうだ。
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