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「えっと、でも……亡くなったのは1年前って言ってたよね? あなたはいつ、生まれていたの?」
「生成されたのは、尚也の死後です」
「え、でも……」
クローンと言ったって人間。同じ遺伝子を持つからと言って、いきなり16歳の人間をぽんと生み出せるわけじゃない。本体の体細胞から『生成』されたら、生まれたばかりの赤ちゃんになり、幼児になり、少年期を過ごして……という過程が必要。
つまりは、クローン生成されたからといって、いきなり目の前のナオヤくんのような17歳くらいの少年になるわけがないということ。
私の考えなんてお見通しなのか、それとももう何度も同じような目で見られてきたのか。ナオヤくんは少しも傷ついた様子も困った様子もなく、頷くだけだった。
「これは、秘匿性の高い内容なので、ご両親にも内密にお願いしたいのですが」
「は、はい」
ナオヤくんの顔が、すぅっと近づいてくる。あまりにも急に距離が詰まって、私の呼吸まで詰まってしまった。
だけどナオヤには見えていないようだった。私の耳元に顔を寄せて、それまでと何も変わらない口調で、さらりと告げた。
「僕は他の人の10倍以上の早さで成長促進し、ラーニングを受けました。尚也のクローンではなく、複製体として尚也を再現するために」
「複製体……!?」
思わず声が跳ね上がった私を、ナオヤくんは「静かに」とジェスチャーで咎めた。
「ごめんなさい。でも、それは……」
「ええ。法で認められていません」
あっさりと、言ってしまった。
クローンに関する法で厳命されているのは、クローンも一人の人間個体として扱うこと。出生の経緯、方法如何を問わず、誰かの代わりには決してしないということ。
そのための実子登録であって、それ以外の目的でのクローンの生成は一切認められていない。クローンとしての生成管理番号はついているけれど、オリジナルと同じ人権を持っている。そのはずなのに、彼は一人の人間としてじゃなく『深海尚也』として生み出された。
驚きで、何て言ったらいいかわからない。
何に一番驚いているかって……そんな話を平然として、少しも悲しそうじゃなく、怒ってもいない……そんな目の前の『ナオヤくん』に、何よりも驚きを隠せないでいる。
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