chapter1 再会、もしくは出会い

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「私の話なんて別に……」 「何故先ほど、わざわざ自己紹介を動画として撮影していたのですか。それも、わざわざ自身の紹介動画を撮った後に、あなたの『姉』である天宮愛さんの分まで撮っていたのでしょう。不可解なことが重なりすぎています」  どうも、逃がしてくれそうにない……。  私は、ため息を一つついて、諦めた。 「自己紹介動画を撮ったのは、高校の春休みの課題だから。あとは、なんというか……覚悟を決めるため?」  尚也は目を瞬かさせている。聞き返されると面倒だから、一気に話すことにする。 「私は……私もクローンで、実子登録済み。愛が生まれて一年後に心臓疾患が見つかって、慌てて生成されたの。それ以降、愛は体に負担を掛けないように静かに穏やかに、私は健康に逞しく、教育されてきた」  ナオヤの視線がほんの少し動いた。何かに、気付いたのかも知れない。 「私は『妹』として登録されたけど、お母さんのお腹の中で育ってない。人工育成器で愛の出産時まで育てられて、親に引き渡された。愛より健康になるように。それって愛の分まで生きろってことなのかと思ってた。でも違った。愛の余命が短いって知ったお母さんは、私にドナーになれって言った……私は、愛の体の『スペア』だったみたい」  ナオヤは、少しだけ考え込んで、口を開いた。 「ですが、実子登録されたクローンからの臓器等の移植行為は禁止されているはずです。あなたの言った『スペア』扱いでのクローン生成を防ぐように、と」 「そう法律で決まったのは、何年か前でしょ。私が実子登録された時には、まだその法律はなかったの。そして、愛は死んだ。大人になるまで生きられないって言われていた通りに、若くて可愛いまま死んじゃった……私が、代わってあげられなくなっちゃったから、死んじゃった」  言ってしまった。こんなことを言っても何にもならないのに。言ってしまった……。  ため息をつく私の顔を、ナオヤは不思議そうに覗き込んだ。 「それで……どうして、さっきのような動画を?」 「それ……聞く?」  思わず、口を突いて言ってしまった……。それ以上、話を続けないだろうと思っていたのに。思っていた以上に好奇心旺盛なのか、空気を読まないのか、デリカシーがないのか、あるいは全部か。  いや、と思い直す。それはあくまで自分の希望的観測だ。彼にそれを押しつけるのは違う。話したくないのが、本音だけど。 「ええと……だから、つまり……愛は両親が思うような治療を受けられないまま死んじゃったのね」 「はい」 「両親は色々手を尽くしたんだけど、そうなっちゃって、落ち込んで……特にお母さんが」 「はい」 「それで、最近よく私を『愛』って呼ぶの。呼び間違いじゃなくて、本当に愛だって思っている時が、だんだん増えてね」 「だから『愛』の練習を?」  こくん、と頷くと、ナオヤは首を傾げた。今の話のどこに疑問が湧くのか。自分では割と自然な流れだったと思うのだけど……。 「それは……あなたが『愛』の真似をするよりも前に、お母さんが医師の診察を受ける方がいいのでは?」 「カウンセリングなら受けてるけど、精神的に安定できることは多い方がいいでしょ。だから……」 「なるほど」
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