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クローンの実子登録が制度化し、その扱いがオリジナルと同等だと法で制定されてからも、クローンには生成管理番号がつけられる。出生時に作る個人籍と連動した管理番号とは別の、クローンとしての生成番号。
この番号が与えられた人間は、住民票に籍とは別の欄が設けられ、しっかりと記載されていた。その番号はあらゆる身分証明書にも記載され、生涯削除できない。
身分証明書が必要な局面では、この番号のあるなしで人間かクローンか、簡単に区別できる。
クローンが実子として登録でき、社会の一員として認められている現社会においてすら、私たちはまだ、水面下で非人間扱いなのだ。
昔は更に、クローンであることがわかる印を身につけるよう義務づけられていた。
だけど今は、そんなことはない。生まれてから死ぬまで、クローンであると公表せずにすむ人だっている。そんな社会なのに……
「お父さん、どうしてわざわざ……!」
「違うよ、ヒトミちゃん。ヒトミちゃんを悪く言うようなコールじゃなかった。絶対にそうだって、私は思う」
「弓槻さん……だったら、他に何を言ったの?」
「色々難しいこと言ってたけど……要約するとたぶん、これからも仲良くしてやってくれってこと……だと思う」
「……え?」
ますますわからない。どうして、わざわざ?
首を傾げていると、加地くんがその言を継いでくれた。
「俺たちはヒトミがクローンだって知ってたけど……ヒトミの父さんはさ、不安だったみたいだぜ」
「不安? 何が?」
「そりゃ、側にいるのがクローンだって知っても仲良くしていられる友達かどうか……じゃね?」
「……え? ちょっと待って、わからない。なんでお父さんが、そんなことを?」
「落ち着いて」
困惑する私の手を、弓槻さんが優しく捕まえて、両手で包み込んだ。
「あのね、言われたことをできるだけ思い出したまま話すね。まず最初に、うちの娘と仲良くしてくれてありがとう……ってお礼言われた。でもすぐに、娘はクローンとして生まれた身だということは知っているかって、聞かれた。あと、お姉さんが生きてた間、どんな風にしてたのかも、言われた」
クローンの証明を身につけないようになったことでもわかるように、やっぱり偏見を持つ人は未だにいるのだ。こんなことを、わざわざ聞いてしまうほどに。
「その後、お父さん言ってたよ。娘は影に潜むように生きてきて、それが自分の役割だと信じ切っている。だが、もう日なたに出なければいけない時なんだって」
「日なた……?」
「俺も同じこと言われた。要するに、普通に仲良しの友達同士やるよりもずっと大変だけど、ヒトミが日なたに出られるように手伝ってやってほしいって……そう言ってた」
昨日、私に言ったことと同じだ。
それを、わざわざ連絡先を調べて、大事な友達三人にまで言ったんだ。
「なに、それ……」
胸の内に、また、ぐつぐつと熱い何かが煮えたぎってきた。だけど、それを留めるように、弓槻さんは私の手をきつく握った。
「私は……お父さんに、賛成」
「……え?」
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