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chapter2 『実験』の始まり
「はじめまして。転校生の『深海尚也』です。どうぞよろしくお願いします」
先日会った奇妙な人が、新学期、また目の前に現れた。本当に、変な人だった。
昔の知り合いなのかと思ったら、そのクローンで。しかもおそらくは違法な形で生成されたクローンで。いきなり身の上話をして、しっかりと巻き込まれてしまって……。
挙げ句、私と共にオリジナルを再現できるように協力しようと言ってきた、変な人だ。
あの時は頷きながらも曖昧に返事をして、なんとか連絡先を交換する前にその場を去った。それで、終わりにできると思ったのに。
越してきたと言っていたけど、まさか転入先が同じ高校だったなんて。しかも同じクラスだなんて……。
しかも、絶対に私がいるとバレている。私が彼を見て驚くのと同時に、目を見開いていた。表情は柔らかく微笑んだままだったけれど、それからもずっと、チラチラ私の方を見てくる。
他の女子たちは涼やかで整った面立ちの転校生を見て、密かに歓声を上げていた。そんな中で、私だけがそろっと顔を背けていたのだった。
だけど、時既に遅しで……
「こんにちは、天宮さん」
深海くんは……いや、ナオヤくんは迷わず私の元までやって来た。衆人環視の中、こんなにも至近距離で笑顔を向けられては、無視できるはずがない。
「……どうも」
答えると、ナオヤは満足そうに頷いた。
「なんだ。深海と天宮は知り合いか?」
「はい。以前、同じ学校でした」
「なんだ、そうか。じゃあ、席は一つズレてやってくれるか。知り合いが近くにいた方がいいだろう」
「ありがとうございます」
先生の言葉に従って、隣にいた女子はさっと席を空けて、別の席へと移っていった。
「端末の設定方法を教えてくれますか」
転校初日にやらなきゃいけないことだ。仕方ない。ナオヤの席に近づいて、横からモニターを操作する。
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