chapter6 約束

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 おそるそおる、といったように口を開いたのは、加地くんだった。 「深海、お前……」 「はい」 「それ……悪いけど、すっげえつまんない」 「……え?」  意外そうな声を上げるナオヤくんを置いて、弓槻さんもそろりと言う。 「ごめん、私も……ウケない」 「え?」  助けを求めるように、私を見るナオヤくん。だけど思わず、目を背けてしまった。 「おかしいな……ヒトミさんは大笑いしてくれたんですが」 「まぁ……笑いのツボは人に依るし」 「どうしよっか。ウケる一票、ウケない二票かぁ」  その瞬間、思わず叫んでいた。 「え、今の話……スルーするの!?」  思い切りクローンだってバラしていたような……知らず、視線が泳いでいたように思う。だけど加地くんも弓槻さんも、キョトンとしていた。 「え、知ってるよ? この深海くんがクローンだって」 「てか、あの時廊下で話聞いてたし。その後にも折を見て、ちゃんと話してくれたし」 「そう……なの?」  そうだった。ナオヤくんが過去を色々と話してくれて倒れたあの時、二人は聞こえる場所にいたんだった。  聞いていたのか、知っていたのか……確認してみたかったけれど、もしも知らなかった場合、私が秘密を話してしまうことになる。それは、とても良くない……そう思って、話せずにいた。幸い二人も何も聞かないまま、普段通りに接してくれていたから、その件について気にしなくなっていたんだった。  だけど何も聞かなかったのは、ちゃんと本人から聞いたから、ということらしい。  私一人、隠し事をしているようで心苦しかったけれど、もう気にしなくていいということか。 「そっか……そうなんだ……」  ちょっとだけ、胸の奥が軽くなった。それはつまり、二人がナオヤくんを受け入れてくれたということ。私に言ってくれたのと同じように。  考えてみれば当然かもしれない。だって、加地くんと弓槻さんなんだもん。  なんだかすぅっと肩の力が抜けて、重かった息をすべて吐き出せた気がした。  そして、『誰かを笑わせる』の項目にそっと指を触れ、線を引いていく。 「私は、やっぱり面白かったかな」 「そ、そうか……まぁそう言うなら、それでいいか」 「一人でもそう言うんなら、まぁいっか!」  三人揃って、クスッと笑って銭を引いた。  ただ一人、ナオヤくんだけが少し不服そうだったけれど。
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