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「千波さん、ちょっといいですか?」
現れたのは、千波の後輩の刑事・深井圭市だった。
千波を呼びにきた深井だったが、神里たちの姿に気付いて軽く頭を下げる。
「あ、神里先生。どうも、お疲れ様です」
「ああ、そっちもご苦労さん」
神里は軽く手を挙げて返した。
「深井君、何か用?」
「はい。例の防犯カメラの映像が取れたので確認作業をしようかと」
「ああ、あれね。分かった。すぐ行く」
「お願いします」
そう言うと、深井は踵を返して足早に立ち去っていった。
その後ろ姿が完全に見えなくなってから、神里は言った。
「忙しいみたいだな」
「ええ。上の指示とは別に隠れてこそこそ調べてるものですから」
「なるほどな」
納得したように頷いて、神里は千波に向き直る。
「ところで、さっき言いかけたのは何だったんだ?」
「ああ、そうでしたね」
千波は神里の質問に答えるべく口を開こうとした。
──その時、今度は耳をつんざくような泣き声が響いてきた。
何事かと思い、全員がその方を見る。
待合ロビーに並ぶソファ。その片隅で悲鳴を上げながら泣く女性が居た。
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