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「ん? 誰だ?」
「さあ。とにかく出ます」
手に取ったコーヒーカップを再びテーブルの上に置いて、藤本は扉の方に近付く。そっと開けると、そこに紺の帽子とジャケットを纏った男性が立っていた。
50代半ばぐらいだろうか。人の良さそうな笑みを浮かべるその人は、両腕にすっぽりと収まる程度の縦長の段ボール箱を抱えていた。
「ええと、どちら様でしょうか?」
「どうも、立永配送です。お届けの品をお持ちしました」
「ああ、どうも。ありがとうございます」
藤本は頭を下げて、配達員の男性から段ボール箱を受け取った。それほど大きくはないが、ずっしりとした重みが感じられる。藤本は後ろを振り返り神里に声を掛けた。
「先生、お届け物です」
「ん? ああ、もしかしてアレか」
心当たりがあったのか、神里は頷いて立ち上がった。ゆっくりと扉の方に近付く。
「即日配送とあったから明日届くのかと思っていたが、
まさか注文した当日に届くとは……」
「うちは当日配送のサービスもやってますから」
笑顔で言いながら配達員の男性は伝票を差し出す。
それを受け取ろうとした時、神里はふとその手を止めた。
「まさか……」
神里が小さく呟く。そして、信じられないものを見るような目で配達員の男性を見た。
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