(2)助手、人とぶつかる

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(2)助手、人とぶつかる

慶田大学は東京のビジネス街の一角に建っていた。 キャンパスを出て15分ほど歩けば最寄である新宿駅に着く。 駅の近くには大型のショッピングセンターがある。 食料品、衣料品、雑貨、贈答品……等々、何でも揃っている便利な場所だ。 おしゃれな外観の建物が建ち並び、沢山の人々がひっきりなしに行き交っている。 そんな人々の中に紛れて、藤本は歩いていた。 手にぶら下げている買い物袋の中には、唐揚げを作る材料が詰まっている。 彼は今、買い物を終えて大学に戻るところだった。 4月下旬。 街路に立ち並ぶ桜の木は華やかな時期をとうに過ぎて、青々とした葉桜が生い茂っている。 忙しなく行き交う人々の中、藤本はゆっくりと歩く。 (買い忘れは無いかな) 袋の中身を確認しつつ雑踏の中を歩いていく。 (400グラム分の鶏肉を買ってくるように言われてるけど、  さすがに先生でも一人で食べるには多すぎるんじゃないかなあ。  でも、あの人めちゃくちゃ食べるし、意外とこれぐらいいけるかも。  それに、足りなかった時の方が機嫌が悪くなって面倒だし、  多い分に関しては別に良いか) そんなことを考えながら、藤本は大学のキャンパスに向かって歩く。 そうして曲がり角に差しかかった時のことだった。
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