(1)教授、ワガママを言う

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「よし、決めたぞ」 「何をですか?」 「ここで作って食う」 「は?」 「聞こえなかったか? ここで唐揚げを作る。そして食うんだよ。  幸い、キッチンスペースには調理器具も揃ってるしな」  神里の言う通り、この研究室には小規模だがキッチンスペースが併設されている。主にコーヒーを作ることに使われているのだが、偶に簡単な料理を作ることもあるのだ。 「そういうわけだ。藤本、今すぐ材料を買ってこい」 「え?」 「今は11時過ぎだから、12時ぐらいには戻れるだろう。  そこから作り始めて1時には食えるようにしろ」 「あの、もしかして作る作業も全部、僕にやらせようとしてません?」 「当然だ」 「えぇ……」 「何だ、不服そうだな」 「だって……」  何か抗議をしようとした藤本に向かって、神里はビシッと人差指を突き出す。 「おい、藤本。テメェの肩書きを言ってみろ」 「大学院生です」 「それもだが、もう一つあるだろう? 大事な肩書きが」 「えーと……コンビニのアルバイト店員」 「違えよ! 助手だろうが! 俺の!」 「あ、はい。院生助手をやらせてもらってます」 「そうだ。つまり、俺はお前さんの上司ってわけだ。  そんな俺からの命令なんだから、黙って従うのが筋ってもんだろ」 「えぇ……」 「ほら、分かったらさっさと行ってこい。上官命令だぞ」 「いつからここは軍隊になったんですか」 「つべこべ言うな」 「はいはい」  ため息混じりに藤本は椅子から立ち上がった。書きかけの論文を中断してパソコンをスリープモードにする。 (せっかく筆が乗ってたのになあ)  心の中で愚痴をこぼしつつ、研究室を後にする。
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