(1)教授、ワガママを言う

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 神里達人という人は、こういう強引なところがあるのだ。何かやりたいことを思いつくと、周りの声など一切聞かずに押し切ってしまう。  彼のワガママに振り回されるのは、藤本にとってもはや日常の一部と化していた。 (あれで大学教授が務まるんだから、世の中って不思議だよなあ)  神里は心理学部の教授だった。  専門が犯罪心理学であることから、警察から捜査協力を求められることがよくある。そして、神里のアドバイスによって事件が早期に解決した事例は少なくない。しかも、所属している大学が私立の名門と謳われる慶田大学なので、彼は世間的には高名な心理学者として扱われている。 (こっちにしてみれば、ただの理不尽おじさんなんだけど)  そんなことを思いながら、藤本は大学の外に出た。
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