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「なあ、千波刑事」
「はい」
「蒲生温人は本当に比橋尚真殺しの犯人なのか?」
「……」
「違うんじゃねえかって、俺はそう踏んでるんだが」
神里の言葉を受けて、千波は硬かった表情を少しばかり緩めた。
「ええ、実は私もそう思ってました」
「だよなあ」
「とは言え、本人が殺害を認めているし上の方針もあるので、
一応はこのまま捜査は進めますが」
「当然、真犯人が別にいる可能性も視野に入れてるんだな」
「ええ、まあ」
千波が曖昧に頷いたところで、神里は藤本の方に向き直った。
「なあ藤本。ここまでの話を聞いて、お前さんはどう思った?」
「え?」
「お前さんの意見も聞いておきたいんだが」
「うーん、確証が無いことはあまり言いたくないのですが」
「直感で構わん。思ったことを言ってみろ」
「藤本君、私も是非聞きたいわ」
神里と千波の二人から促されて、藤本はおずおずと口を開いた。
「お二人が今言っていた通り、蒲生さんは犯人ではないと思います。
ですが、犯人を知っている可能性はあると思います」
「ほう」
「詳しく聞かせて」
神里は面白そうなものを見る目で藤本を見た。
千波も興味深そうな眼差しで続きを待っている。
試されているような視線に居心地を悪くしながらも、藤本は話を続けた。
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