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「23日の夜に比橋さんは殺害された。それを知らなかったから、
蒲生さんは24日の朝、配達の為に比橋さん宅を訪れたんだと思います。
普通に、ただの仕事として。で、その先で比橋さんの遺体を発見した」
「うんうん」
「普通なら、その場ですぐに警察に通報するものですが、蒲生さんはしなかった。
そればかりか、現場に自分の指紋を残して逃亡した。
そんなことをすれば、自分が警察に疑われるのは明白なのに」
「そうだな。実際、警察は蒲生温人を殺人の容疑で捕まえてるもんな」
「ええ、そうですね」
神里も千波も頷く。藤本は更に続けた。
「それで思ったのですが、蒲生さんは自分に疑いが向くように
わざとそう仕向けたんじゃないでしょうか」
「ほう。その理由は?」
「誰が犯人なのか、気付いてしまったから」
「ふむ」
神里が小さく頷く。
「蒲生は本当の犯人を庇ってるということ?」
千波が前のめり気味に尋ねる。
半歩ほど引きつつ、藤本は答えた。
「ただの仮説です。蒲生さんの行動の不自然さに納得のいく説明をつけるとしたら、そうなるかなと」
「そうだな。それで良い」
力強く頷いて、神里が藤本の背中をポンと軽く叩いた。
そして千波の方を見据える。
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