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「なあ、藤本」
険しい面持ちのまま神里が口を開く。
「何ですか?」
「俺は今からあの母娘と話をする」
「比橋尚真の遺族の方たちですか?」
「そうだ。お前さんには、第三者として冷静に彼女らを観察してほしい」
「あの人たちを、ですか」
「ああ。今、お前さんの中には色々と疑問があると思う。
それについては後で全部説明してやる。
だから、とにかく今は彼女らの観察に集中してくれ」
「……」
「頼む」
「……分かりました」
神里の真剣な眼差しに押されて、藤本はただ首を縦に下ろした。
千波の話を途中で打ち切ったのはなぜか?
千波に、立永留一の話題を出さなかったのはなぜか?
比橋尚真の遺族を見て「なんてこった」と呟いたのはなぜか?
これらの疑問を引き摺りつつ、藤本は神里の指示に従うことにした。
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