(13)教授、気付いてしまう

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「なあ、藤本」  険しい面持ちのまま神里が口を開く。 「何ですか?」 「俺は今からあの母娘と話をする」 「比橋尚真の遺族の方たちですか?」 「そうだ。お前さんには、第三者として冷静に彼女らを観察してほしい」 「あの人たちを、ですか」 「ああ。今、お前さんの中には色々と疑問があると思う。  それについては後で全部説明してやる。  だから、とにかく今は彼女らの観察に集中してくれ」 「……」 「頼む」 「……分かりました」  神里の真剣な眼差しに押されて、藤本はただ首を縦に下ろした。  千波の話を途中で打ち切ったのはなぜか?  千波に、立永留一の話題を出さなかったのはなぜか?  比橋尚真の遺族を見て「なんてこった」と呟いたのはなぜか?  これらの疑問を引き摺りつつ、藤本は神里の指示に従うことにした。
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