12 のろい

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 す。と、現れた手が、そのナイフを受け止めた。止まっているものを拾うかのような気安さで刃先を二本の指が挟む。 「燈。Don't do that.死んじまうぞ」  同時に、丸山の口をその人物のもう片方の手が抑えた。逃げられないように後ろから抱えるようにして。だ。 「先生」  その顔を見て、燈は安堵の吐息を漏らした。それは、燈が待っていた人だった。 「Zip your lips.」  とっさに口を押えられた丸山がその腕の中で暴れるけれど、びくともしない。 「Shush」  暴れる丸山の耳元に、低く作った声が響く。その声にはこれ以上逆らうなら、容赦はしないという響きが籠っていた。 「ん? お前……」  そのDDが、何かに気付いたように呟いた瞬間だった。丸山の手から、ひらり。と、紙が舞い落ちる。  それが地面についたと同時に強い閃光。  一瞬、その光に目が眩む。  そして、次の瞬間には、もう、丸山はいなくなっていた。 「……ふむ」  床に落ちた紙を拾い上げて、DDが吐息を漏らす。 「用意周到じゃねーか」  にやり。と、笑って彼は燈に向かって拾った紙を差し出した。 「閃光の魔符」  その紙を燈は受け取る。  使用後で込められた魔光の力はなくなっているけれど、目くらましに使われる初歩の魔符だ。作った人物の銘はない。ただ、丸山自身の作でないことは分かった。その魔光の残り香を燈はどこかで感じたことがある気がする。けれど、それは使用者の丸山の魔光の匂いと混ざってしまって、誰であったかを特定することができなかった。 「なんだか。楽しそうなことになってるな。燈?」  にやり。と、DDが笑う。本当に楽しい玩具を見つけたような表情だ。  DDでなければ、燈も、笑い事じゃない。と、怒ったかもしれない。けれど、その表情がただ遊んでいるのではないと燈は知っている。 「……あの」  教師には話せない。信頼はおけるけれど頭が固い教員には話せなくても、DDになら話してもいいかもしれない。そう思って、燈は口を開きかけた。
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