イントロ

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 一時期でも友だちとして付き合っていたのだから、その相手にたいして、口が過ぎているという指摘はあるだろうと思う。  たしかに、非紳士的な言い方ではあったと思うが、あいつはそれだけのことをしたのだ。  あいつは、親御さんがさんざん待ちわびて、ようやく生まれた子どもだったらしい。  それで甘やかされて育ったのだろうと近所の噂として聞かされたことがある。  僕が、なぜあいつは新しいステレオコンポやパソコン、ビデオデッキをぽんぽん買ってもらえるのか、お袋にきいたときの話だったと思う。  あいつは、インドアの遊びが好きだったのもあって、たびたび僕を家に呼びつけては、コンポ等の機器を自慢して威張ってばかりいた。  平日はほぼ毎日のようにそれに付き合わされて、僕は辟易としていた。  これが「親友」の勤めだと思って、毎度初めて聞くように驚いてみせて、うらやましがる言動を披露していたが、後から思えば、僕は要はあいつの取巻きでしかなかった。
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