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 すいませんでしたと頭を下げ、ふたりで入ってきたほうへと向かおうとする。  ふたたび声をかけられた。 「出口はそっちじゃねえ。向こうだ」  正面の出入り口を示される。素直に従い、足を向けたとき、「そうだ、おまえら」と呼び止められる。 「ここのことは誰にも言うな。そのかわりに、こいつをやる」  振り返ると、男が近づいてきて友達の手になにかを渡した。 「なんですか、これ」 「アメだ、美味えぞ」  にんまり笑い、「いいか、ここのことは言うなよ」と男は脅した。 「他人(ひと)に言うと、鬼が来るぞ」  目が笑っていない。背筋が冷えた。  うなずきながら、門扉まで走った。  あんな異様な体験をしたにもかかわらず、どうしてすっかり忘れていたのだろう。  そういえば、と考える。アメ、どうしたんだったか。  友達がもらったはず、で……そうだ、門の外に出たときに、ひとつ手渡されたんだっけ。  くるりと紙が巻かれ、両端をぎゅっと絞った、そのかたちを覚えている。  やけに白く薄い紙で、中の球体が透けていた。
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