5/6
前へ
/19ページ
次へ
 紙を広げてみると、大玉よりは少し小さい、真っ黒な(あめ)が出てきた。素材は黒砂糖なのだろうか。飴ならば練って形を整えるうちに空気が入るものだが、つやつやとした表面はガラス玉のようで、黒いのに向こう側が見えそうな透明感がある。  不審な人物からもらったものを、安易に口に入れるほど不用心ではない。  こんなものが食えるか、と思って友達を見ると、嬉々として飴玉を口に放り込んでいるところだった。  驚いていると、友達はうひゃあ、と声をあげた。 「おい、これすげぇぞ! ものすごくうめぇ!」  すげぇ、なんだこれ、と感嘆の言葉を次々に口にする。 「おまえ、食わねえのかよ」 「だって……」  ためらっていると、友達は急に不機嫌になって目を細め、にらんできた。 「俺が食って大丈夫なんだから! おまえも食えってば!」  目を見開いて、大声で迫られる。いやだ、と言えなくなった。  ただ、恐ろしかった。  つまんでいた黒い飴玉を、友達に奪われたかと思うと、無理やり口のなかに突っ込まれた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加