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 その瞬間、飴玉が唐突に液体になって、舌のうえでとろけた。甘味が脳天に直撃する。いままで味わったことのない味だった。甘くて、幸せな感覚が口内に転がる。  ふわりと心地よい甘い香りが鼻の奥に残り、このまま飲み込んでしまいたくなる。  だが。  その味は、勝手に喉に入り込もうとしているのに気づいて、我に返った。ぐっと喉が絞まった。  異物感にむせて、咳き込み、その場で嘔吐した。  友達はそのようすを冷淡に眺め、顔をしかめた。 「なんだよ、もったいねぇな。だったら俺がもらったのに」  舌打ちをして、冷えた目線を投げかけてくる。  まるで、人が変わったかのようだった。   
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