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 町内会の役員が、アパートの経営者と知り合いだったらしい。念のため、敷地のお祓いをしたほうがいいのでは、と進言したそうだ。  先方も、できたばかりのアパートだけに、妙な噂が立つのを嫌ったらしい。きちんと神主が呼ばれて、敷地の祠があったあたりで魂抜きの儀式が行われた。  それ以降、アパートに住む子どもたちに、おかしな行動はなくなった。 ──はずだった。  思い出してしまったのだ。そして妻に話してしまった。  なぜ、昔のことを忘れていたのだろう。  あの日、飴玉を食べた友達は、あの屋敷の門の前で別れたあと、家に帰らなかった。今も行方不明のままだ。  こわくて、だれにも本当のことが言えなかった。  あの屋敷の(あるじ)に脅された。だれにも言うな。  鬼が来るぞ、と。  もし、だれかに言ったら、間違いなく友達と同じになる。
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