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 自宅前の古い屋敷が取り壊されて、ようやく更地になった。  そこそこ広い敷地だったので、公道に向かって縦に並んで三棟、しゃれた外装の二階建て木造アパートが完成した。  小学校が近かったせいか、メゾネットタイプの間取りには若い家族が多く移り住んできた。  我が家は、道路を挟んで向かいにあった。だから、敷地のなかで子どもたちが遊ぶ姿が窓からよく見える。  おかげで日中はいくらか騒々しくなったが、お化け屋敷のような建物が放置されるよりマシだった。肝試し気分の若者が不法侵入することが続き、治安の低下や不審火に警戒しなければならなかったからだ。  街並みが新しくなり、住民が増えて本当によかったと思っていた。  そんなある日のことだ。春休みに入って、すこし経ったころだと記憶している。  家族で外出して帰宅した。夕方にはまだ早いが、日中の暖かさがだいぶ衰えて、すこし肌寒くなってきた時刻だった。  家の前の公道の真ん中に、ぽつんと大きめの段ボール箱が放置されているのを見つけた。
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